〜理想の間取り、でも決断できない理由〜
■ 二度目の打ち合わせへ
前回のモデルハウス見学から数日後。
我が家は、ついに二度目の打ち合わせの日を迎えました。
子どもが成長して、マンション暮らしが少しずつ手狭に感じるようになった私たち。
特に、妻の希望は明確でした。
👩 妻
「パントリーがほしい。あと、洗濯動線を考えるとランドリールームもあったほうがいいかな。」
👨 私
「なるほど。あとは収納。ウォークインクローゼットも入れたいね。」
そんな希望を先週の打ち合わせで営業マンに伝えていました。
今日はいよいよ、その“回答”を持ってきてくれるというのです。
■ 建売業者のオフィスにて
土曜の午前10時。
車を走らせ、前回と同じ不動産業者のオフィスへ。
この業者は、ローコスト住宅を中心に扱う建売業者です。
地域ではよく見る会社で、どちらかといえば“価格重視”の印象がありました。
👨💼 営業マン
「お待たせしました! お伝えいただいたご希望を反映したプランを用意しました。」
そう言って広げたA3サイズの図面を見て、私は思わず息を呑みました。
■ まさかの「理想の間取り」
👩 妻
「えっ……これ、全部入ってる……?」
👨 私
「パントリーもあるし、ウォークインも、ランドリールームも。
しかも、この収納の位置、すごく使いやすそうだ。」
👨💼 営業マン
「ありがとうございます。できる限りご希望に寄せました。
実は、まだ建築確認申請前なので、多少の変更は可能なんです。
“青田買い”という形でご検討いただければと思っています。」
👨 私
「青田買い……ですか?」
👨💼 営業マン
「はい。建売住宅がまだ建っていない“更地の段階”でご契約いただくことを、青田買いといいます。
今なら間取りの微調整も、内装カラーの変更もある程度は対応可能です。」
💡ここでワンポイント解説:建売の「青田買い」とは?
不動産業界でいう「青田買い」とは、
完成前の建売住宅を契約することを指します。
昔の言葉で「青田売り(あおたうり)」と呼ばれていたことが由来で、
田んぼの稲が青いうちに“収穫前の状態で売る”ことから来ています。
つまり、建物が建つ前に購入を決める=青田買い。
● 青田買いのメリット
- 価格が安く設定されることがある(完成後よりも初期販売価格が低い場合も)
- 間取り・内装に一部希望を反映できる
- 人気の区画を早めに押さえられる
● 青田買いのデメリット
- 完成イメージが掴みにくい(実物がないため)
- 工事中の仕様変更には限界がある
- 完成後に「思っていたのと違う」と感じるリスク
👨 私(心の声)
「なるほど。今なら多少変更できるってことか。
理想の間取りだし、この価格帯なら……正直、悪くない。」
■ 希望にぴったりのプラン
改めて間取り図を見ると、
妻の要望がすべて反映されていました。
- 玄関横のシューズクローク
- キッチン横のパントリー
- 2階主寝室のウォークインクローゼット
- 洗面室に隣接するランドリールーム
- リビング階段+和室コーナー
👩 妻
「え、これ……本当に建売なの?」
👨💼 営業マン
「そうなんです。弊社では、最近“カスタム建売”という形を取り入れてまして。
青田買いでご契約いただければ、お客様のご希望をある程度反映できるんですよ。」
👨 私
「すごい……。これなら注文住宅みたいだ。」
■ ただ、一つだけ気になった点
申し分のない間取りでした。
しかし、細かく見ると“理想とは少し違う”部分も。
👩 妻
「あ、キッチン、ガスコンロなんだ。IHじゃないのね。」
👨 私
「トイレもタンクレスじゃないな……。」
👨💼 営業マン
「はい。標準仕様ではこの形になります。
ただ、オプション対応は可能ですよ。
あと、太陽光パネルも標準では付けていませんが、
別途お見積もりできます。」
👨 私(心の声)
「うーん……やっぱり“ローコスト住宅”だから、仕様面は抑えてあるんだな。
でも、この間取りでこの価格は、正直魅力的だ。」
■ 気持ちは8割、決まっていた
打ち合わせが終わり、帰りの車中。
私は気持ちが高ぶっていました。
👨 私
「これ、ほぼ理想通りだよ。
しかも、建売価格でここまでできるなら、かなりお得だと思う。」
👩 妻
「……うん、間取りはすごくいいと思う。
でも、なんか、まだピンとこないの。」
👨 私
「え、どこが気になる?」
👩 妻
「うーん……“建ってない家”を買うっていうのが、やっぱり不安なの。
図面だけで決めるって、正直こわい。」
妻の言葉に、私はハッとしました。
そう。私の頭の中では、すでに“建っている家”が出来上がっていたけれど、
実際には、まだ更地。
“青田買い”とはつまり、
「未来の家を想像して契約すること」なのです。
■ 妻の不安、夫の焦り
👩 妻
「あと、仕様を変えたいってなったらオプション費用がかかるでしょ?
結局、安いと思ってたのに高くなるパターンもあるよね。」
👨 私
「それは……たしかに。」
私の気持ちは8割方、購入に傾いていました。
しかし、妻は“慎重派”。
マンションを購入したときも、彼女の判断が冷静で助かったことを思い出します。
👨 私(心の声)
「焦るな。家づくりは勢いだけじゃダメだ。
でも、このチャンスを逃すのも惜しい……。」
■ “青田買い”の判断基準とは?
その夜、もう一度「青田買い」について調べ直しました。
同じように悩む人の体験談が多く、
メリットだけでなく、**“見えないリスク”**も語られていました。
🔍 青田買いを検討するときのチェックポイント
- 信頼できる業者か?
→ 実績・口コミ・施工品質を確認。ローコストでも施工管理がしっかりしているかが重要。 - 契約後の仕様変更はどこまで可能か?
→「建築確認申請」前と後では、変更できる範囲が全く違う。 - 完成後の保証・アフターサービスは?
→ 10年保証、定期点検の内容を事前に確認しておく。 - オプション費用の上限を把握する
→ 標準仕様に満足できない場合、追加費用がどれくらいになるか見積もりをもらう。
👨 私(心の声)
「うん……ここまで整理すると、やっぱり“青田買い”はリスクとチャンスが紙一重だな。」
■ 家族の結論は出ず
週末が終わり、私たちの中ではまだ結論が出ませんでした。
👩 妻
「間取りは本当にいい。でも、完成を見てから決めたい気もする。」
👨 私
「それだと、他の人に買われちゃう可能性があるんだよな……。」
👩 妻
「うーん……焦る気持ちはわかるけど、
家って“勢い”よりも“納得”のほうが大事だと思う。」
私は何も言い返せませんでした。
妻の言う通りです。
■ まとめ:青田買いは「心の準備」が必要
青田買いは、うまくいけば理想の家をお得に手に入れる方法です。
しかし、実物がない状態で決断するというのは、
想像以上に勇気がいることだと痛感しました。
間取り図だけではわからない
「質感」「空間の広がり」「光の入り方」——
そういった感覚的な要素こそ、家の満足度を大きく左右します。
👨 私(心の声)
「でも、あの間取り……やっぱり忘れられない。」
次回、私たちは“第三の選択肢”に出会います。
それが「セミオーダー住宅」。
建売でも注文でもない、新しい形の家づくりとは——?
📝 次回予告:#4 セミオーダー住宅という選択肢
理想と現実の間で揺れる私たち夫婦。
そんなとき、営業マンが提案してきたのは“注文住宅に近い建売”。
果たして、その実態とは……?
